
生成AIを導入したものの、思ったほど仕事が速くならない。そんな声を、ホームページの担当者や経営者の方から聞くことがあります。多くの場合、原因はツールの性能ではなく、任せる作業の選び方と指示の出し方にあります。この記事では、実務で成果につながりやすい生成AIの使い方を、うまくいかない使い方と対比しながら整理します。
前提:AIが得意な作業と、苦手な作業
生成AIは、大量の文章を学習して「次に来そうな言葉」を確率的に選んでいく仕組みです。この性質から、得意なことと苦手なことがはっきり分かれます。
得意なのは、すでにある情報の形を整える作業です。箇条書きを文章にする、長い文章を要約する、同じ内容を別の言い回しに直す、決まった形式に変換する。こうした作業は速く、精度も安定しています。
苦手なのは、事実を確定させる作業です。金額、日付、法令の条文、他社の状況といった「調べれば正解が決まっているもの」は、それらしい嘘が混ざります。判断を伴う作業も同じで、最終的な決定を任せる相手ではありません。
この切り分けができていないと、確認作業に時間を取られて、結局は自分で書いたほうが速かったという結果になります。
使い方1:白紙から書かせず、素材を渡す
「新商品の紹介文を書いて」とだけ頼むと、当たり障りのない文章が返ってきます。誰でも書ける文章なので、結局は全面的に書き直すことになります。
代わりに、手元にある素材を先に渡します。商品の仕様、価格、実際にお客様から言われた感想、他にはない特徴。箇条書きで構いません。そのうえで「この材料を使って、200字の紹介文にしてください」と頼むと、内容のある文章が出てきます。
渡す素材は、整っていなくても問題ありません。打ち合わせのメモや、社内チャットに書き散らした断片で十分です。むしろ、現場の言葉がそのまま入っているほうが、出来上がる文章に具体性が出ます。
AIが持っていない情報は、こちらが渡すしかありません。素材の質がそのまま出力の質になります。「良い文章が出てこない」と感じたときは、指示文を練り直す前に、渡した情報が足りているかを見直すほうが早いことが多いです。
使い方2:完成品ではなく、叩き台を任せる
提案資料の構成案、会議の議事メモの整理、問い合わせメールの返信下書き。こうした「ゼロから考えるのは面倒だが、直すのは簡単」な作業は、生成AIと相性が良い領域です。
ホームページの制作現場でも、ページ構成の候補出しや、原稿の見出し案づくりでは効果を感じやすいはずです。10案出してもらって使えるのが2案でも、白紙から考え始めるより速く進みます。
逆に、そのまま公開できる完成品を期待すると失敗します。最後の3割は人が手を入れる前提で頼むのが、結果として一番速くなります。
使い方3:一往復で終わらせない
最初の回答が的外れでも、そこで諦めてしまうのはもったいない使い方です。「もっと短く」「業界用語を減らして」「この部分だけ具体例を足して」と、部分的に指示を足していきます。
チャット形式のAIは、直前までのやり取りを踏まえて答えます。3〜4回のやり取りで、最初の回答とはまったく違う水準になることも珍しくありません。指示を一度で完璧に書こうとするより、粗く投げて直していくほうが早く着地します。
使い方4:うまくいった指示文は残して使い回す
毎月の報告書、定型の見積説明、SNSの投稿文。同じ種類の作業を繰り返しているなら、うまくいったときの指示文をそのまま保存しておきます。
次回はそれを貼り付けて、素材だけ差し替えれば済みます。テキストファイルやメモアプリに貯めておくだけでも効果があります。多くのAIサービスには、よく使う指示をあらかじめ登録しておく機能も用意されています。
保存するときは、指示文と一緒に「そのとき渡した素材の形」も残しておくと再現しやすくなります。同じ指示でも、渡す情報の粒度が違うと結果が変わるためです。うまくいった回の入力を一式で保管しておくイメージです。
属人化しやすいAI活用を、社内で共有できる形にする第一歩がここです。
うまくいかなかった使い方
反対に、期待したほど機能しなかった使い方も挙げておきます。
- 調べものを丸投げする:料金や制度の内容を聞くと、実在しない数字を自信たっぷりに返してきます。検索機能を持つAIでも、出典を自分で開いて確認する手間は省けません。
- 長い資料を一度に渡して「まとめて」と頼む:全体をならした要約になり、重要な数字が落ちます。「この資料から、金額に関する記述だけ抜き出して」のように、目的を指定したほうが使えます。
- 社内の事情を知っている前提で頼む:AIは自社の商習慣も過去の経緯も知りません。前提を書かずに頼むと、一般論しか返ってきません。
まずは1つの作業から切り出す
生成AIで成果を出している職場に共通しているのは、全部を任せようとしていない点です。「毎週水曜の報告メールの下書きだけ」のように、作業をひとつ切り出して、そこで指示文を固めていく。それが安定したら次の作業に広げる、という進め方が結局は近道になります。
まずは自分の1週間の仕事を振り返って、「面倒だけれど、出来上がったものを見れば良し悪しがすぐ判断できる作業」を探してみてください。そこが最初の適用先になります。