チャットボットを導入する前に — 期待どおりに働かないことが多い理由と、その前にできること

ホームページの右下に表示される、話しかけてくるような小さな窓。チャットボットと呼ばれる仕組みで、問い合わせ対応を自動化できるものとして紹介されることが増えました。

一方で、実際に設置してみたものの、ほとんど使われないまま外してしまったという話も少なくありません。この記事では、期待どおりに働きにくい理由を整理したうえで、どういう場合なら向いているのか、そして先に取り組んだほうがよい改善について考えます。

チャットボットには大きく2種類ある

まず前提として、仕組みには違いがあります。

あらかじめ決めた流れで答える型 「ご用件をお選びください」と選択肢を出し、選ぶたびに次の案内へ進む形式です。答える内容を人が用意するため、間違った回答をする心配はありませんが、想定した質問しか扱えません。

生成AIが文章で答える型 自由に入力された質問に対し、AIが文章で回答します。柔軟に見える一方、元にする情報の準備と、回答内容の確認が必要になります。

「AIを入れれば勝手に答えてくれる」という印象を持たれがちですが、どちらの型も、答えの元になる情報を用意するのは人の仕事です。ここが最初のつまずきどころになります。

期待どおりに働きにくい理由

1. 元になる情報が社内にまとまっていない

チャットボットは、社内にある情報を整理して答える仕組みです。ところが多くの会社では、料金の考え方や納期の目安、対応できる範囲といった情報が、担当者の経験の中にあり、文章になっていません。

文章になっていない情報は、チャットボットも答えられません。導入作業の実態は「情報を整理して文章にする作業」であり、そこに時間がかかります。

2. 実際の質問は、一件ずつ事情が違う

問い合わせの多くは「うちの場合はどうなりますか」という形で来ます。今の状況、予算、時期といった条件が絡むため、一般的な回答では役に立ちません。

とくに料金や納期は、条件を聞かないと答えられない性質のものです。ここでチャットボットが曖昧な回答をすると、かえって不信感につながります。

3. 訪問数が少ないと、改善が進まない

チャットボットは、実際の質問を見ながら回答を足していくことで精度が上がります。1日に数十件の問い合わせがある規模なら改善は早く進みますが、月に数件という規模では、育つ前に運用が止まりがちです。

4. 生成AI型は、間違った回答をすることがある

AIは、手元の情報が不足していても、もっともらしい文章を作ってしまうことがあります。料金や対応範囲について事実と違う説明をした場合、後から「そう言われた」という食い違いが生じます。何を答えさせないかを決めておく必要があり、この線引きには手間がかかります。

5. 利用者が使ってくれるとは限らない

実際に急いでいる人は電話をかけますし、詳しく伝えたい人はフォームに書きます。「まず質問してみよう」という段階の人は、意外と多くありません。画面の一部が常に隠れることを煩わしく感じる人もいます。

6. 運用の手間がかかり続ける

質問の履歴を確認し、答えられなかったものを補い、内容の変更に合わせて情報を更新する。導入して終わりではなく、担当者の仕事が一つ増えるという点は、事前に見込んでおく必要があります。

向いている場面もあります

否定的な点を並べましたが、条件が合えば有効に働きます。

  • 問い合わせ件数が多く、同じ質問が繰り返し来ている
  • 営業時間外の問い合わせが多く、翌営業日まで待たせている
  • 予約や受付など、決まった項目を順に聞けば完了する手続きがある
  • 商品数が多く、条件から候補を絞り込む案内が必要

共通するのは、「量が多く、内容が定型的」という点です。逆に、一件ごとに事情が異なる相談を扱う業種では、効果が出にくくなります。

先に取り組むと効果が出やすいこと

問い合わせ対応を楽にしたいのであれば、次の改善のほうが手間に対する効果が大きい場合があります。

よくある質問のページを作る 実際に届いた質問と回答をまとめるだけです。チャットボットに入れる情報の下準備にもなるため、将来の導入を考えている場合でも無駄になりません。

問い合わせフォームの項目を見直す 必要な情報を最初に書いてもらえる形にしておくと、やりとりの往復が減ります。項目を増やしすぎると送信されにくくなるため、必須項目は絞ります。

判断に必要な情報をページに載せる 対応エリア、料金の考え方、おおよその期間、対応できない範囲。これらが書かれていれば、そもそも質問される前に解決します。

連絡先を分かりやすい位置に置く 電話番号がすぐ見つかるだけで、問い合わせのしやすさは変わります。

まとめ

チャットボットは、それ自体が答えを生み出す道具ではなく、整理された情報を届ける道具です。そのため、社内の情報がまとまっていない段階で導入しても、期待した働きはしにくくなります。

問い合わせの件数が多く、質問の内容が定型的であれば検討する価値があります。そうでなければ、よくある質問のページを整えるところから始めるほうが、少ない手間で確実な効果を得られます。導入を検討する際は、「何を答えさせるか」「何は答えさせないか」を先に決めておくことが、うまく使うための分かれ目になります。

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