
業務システムの開発を相談すると、見積書が手元に届きます。ただ、そこに並んでいる「要件定義」「基本設計」「単体テスト」といった項目は、日常業務では耳にしない言葉ばかりです。
金額の合計だけを見て判断してしまうと、あとから「これは含まれていなかった」という行き違いが起きることがあります。この記事では、見積書によく出てくる項目の意味と、複数の見積書を見比べるときに確認したい点を整理します。
見積書は「作業の一覧表」です
まず前提として、システム開発の見積書は、材料費の一覧ではありません。ほとんどが人の作業時間に対する費用です。
「何人が、何日かけて、どの作業をするか」を積み上げた結果が金額になります。ですから項目を読むことは、そのまま「どんな作業が行われる予定か」を読むことになります。
逆に言えば、項目に書かれていない作業は、原則として含まれていません。ここが見積書を読むうえでの出発点になります。
よく出てくる項目とその意味
要件定義
システムで何をできるようにするかを決める工程です。現在の業務の手順を聞き取り、どの部分をシステムに置き換えるか、どんな画面が必要かを文書にまとめていきます。
この工程には、依頼する側の時間も必要になります。打ち合わせへの参加や、現在使っている帳票の提供などが発生します。
設計
要件定義で決めた内容を、実際に作れる形に落とし込む工程です。画面の並びや項目の配置を決める部分と、内部の仕組みを決める部分に分かれていることがあり、それぞれ「基本設計」「詳細設計」などと書かれます。
開発
設計にもとづいて、実際にプログラムを書く工程です。見積書の中でもっとも大きな割合を占めることが多い項目です。
テスト
作ったものが意図どおりに動くかを確認する工程です。一つひとつの機能を確かめる段階と、業務の流れに沿って通しで確認する段階があります。
テストの費用が極端に小さい見積書は、確認作業の多くを依頼側が担う前提になっている場合があります。誰がどこまで確認するのかは、事前にすり合わせておきたい部分です。
環境の準備・初期設定
システムを動かすための場所(サーバー)を用意し、必要な設定を行う作業です。既存のデータを新しいシステムに移す作業が含まれる場合もあります。
保守・運用
公開後に発生する費用です。不具合の対応、サーバーの更新作業、問い合わせへの対応などが含まれます。開発費とは別に、月額または年額で記載されることが一般的です。
金額だけでは比べられない理由
複数の見積書を並べたとき、金額の差が「割高・割安」を意味しているとは限りません。
ある見積書ではテストと初期設定が含まれ、別の見積書では開発だけが対象になっている、ということが起こります。同じ「開発一式」という言葉でも、想定している範囲が違えば金額は変わります。
比べる際は、金額の前に作業範囲をそろえることが必要です。片方に含まれていない項目があれば、その分が後から追加になるのか、依頼側で対応するのかを確認しておくと、実際の負担が見えてきます。
見積書で確認しておきたい点
読むときに目を通しておきたいのは、次のような点です。
- 保守費用が別に書かれているか … 公開後にかかる費用の目安がわかります
- 修正の回数や範囲に決まりがあるか … 何度まで無償で直せるかは会社によって異なります
- データ移行が含まれているか … 既存の情報を移す作業は、意外と時間のかかる部分です
- 操作説明やマニュアルが含まれているか … 使い始めのときに効いてきます
- 有効期限が書かれているか … 検討が長引いた場合、条件が変わることがあります
期間と体制も併せて見る
見積書には、金額のほかに期間が書かれていることがあります。ここも金額と同じくらい重要な情報です。
同じ内容でも、短い期間で仕上げる前提であれば、その分だけ多くの人が同時に関わることになります。反対に長い期間であれば、少人数で順に進める形になります。どちらが良いというより、社内の都合と合うかどうかで判断する部分です。
また、期間の中に依頼側の確認時間が含まれているかも確認しておきたい点です。「開発2か月」と書かれていても、その後の動作確認に何週間かかるかが含まれていなければ、実際に使い始められるのはさらに先になります。
「一式」と書かれている場合
「開発一式」のようにまとめられた見積書を受け取ることもあります。項目が細かすぎても読みにくいため、まとめること自体は問題ありません。
ただし、その中身を口頭でも説明してもらえるかは確認しておく価値があります。何が含まれ、何が含まれないかを言葉で説明できる状態であれば、認識のずれは起きにくくなります。
まとめ
システム開発の見積書は、作業の一覧表として読むと理解しやすくなります。項目の意味がわかれば、どの工程にどれだけの手間がかかる想定なのかが見えてきます。
複数の見積書を比べるときは、合計金額よりも先に、作業範囲がそろっているかを確認してみてください。範囲をそろえたうえで比べると、金額の差が何から生まれているのかが判断しやすくなります。