
採用がうまくいかない、という話には二種類あります。応募が集まらない場合と、入社した人が短期間で辞めてしまう場合です。後者の原因の多くは、入社前に持っていた印象と、実際の業務の間にある差です。
この記事では、募集の段階で何を伝えておくとこの差が縮まるのかを整理します。掲載内容の目的を「応募数を増やす」から「合う人に届ける」へ切り替える、という考え方の話です。
応募数が多いことが、良い結果とは限りません
募集を出すとき、応募が多いほうが良いと考えるのは自然です。ただ、選考にかかる手間は応募数に比例して増えます。書類を見て、日程を調整し、面接を行う。この時間は、他の業務を止めて確保するものです。
条件に合わない応募が多い状態は、双方にとって負担になります。応募した側も、時間を使った末に見送られることになります。
伝える情報を絞り込むと、応募数は減ります。しかし、残った応募は内容を理解したうえでのものになります。選考に使う時間は減り、入社後の食い違いも起きにくくなります。
差が生まれやすい項目
入社前の印象と実際の差は、決まった項目で生まれやすい傾向があります。
業務の幅 「営業職」と書かれていても、実際には見積の作成、納品の手配、請求の処理まで担当することがあります。小さな組織ではよくある形ですが、書かれていないと想定外の負担に感じられます。
忙しさの波 月末や年度末に業務が集中する、繁忙期に休みが取りにくい、といった状況は、入社してから分かることが多い部分です。
教育の進め方 研修の仕組みがあるのか、実務のなかで覚えていく形なのか。後者の場合、最初の数か月をどう過ごすことになるのかは、応募する側が知っておきたい情報です。
人数と体制 一人で担当する業務なのか、複数人で分担するのか。相談できる相手がいるかどうかは、働き方に大きく影響します。
これらは、書きにくい内容ではありません。書き忘れているだけ、という場合がほとんどです。
良い面だけを並べない
募集の文面は、どうしても良い面を集めた内容になります。ただ、書かれていることがすべて良い話だと、読んだ側は逆に警戒します。
事前に知っておいてほしい事情を、そのまま書いておくほうが伝わります。たとえば、繁忙期は残業が発生すること、当面は一人で担当してもらうこと、社内の仕組みが整っていない部分があること。
こうした内容を書くと応募が減るのではないか、という懸念はあります。実際、減ることもあります。ただ、それを承知で応募してきた人は、入社後にその点で辞めることはありません。事前に伝えるコストと、入社後に辞められるコストを比べると、前者のほうが小さく済みます。
一日の流れを書いてみる
業務の内容を伝える方法として、担当者の一日の流れを書く形があります。
始業から終業までに何をしているのかを、時間とともに並べます。実際に担当している人に聞きながら書くと、具体的な内容になります。「事務作業が思ったより多い」といった実態も、この形なら自然に伝わります。
職種の説明を箇条書きで並べるより、読んだ人が自分に置き換えやすくなる点が利点です。複数の職種を募集している場合は、それぞれ用意しておくと違いが伝わります。
面接で聞かれることを、先に書いておく
面接で毎回同じ質問を受けているなら、その内容は掲載しておく候補です。残業の実態、休日の取りやすさ、評価の仕組み、転勤の有無。こうした質問が繰り返し出るのは、書かれていないからです。
先に書いておけば、面接では別の話に時間を使えます。応募する側も、確認のためだけに面接まで進む必要がなくなります。
聞かれた質問を記録しておき、次の募集のときに掲載内容へ足していく。これを続けるだけで、伝わる情報は増えていきます。
選考の場でも、一方通行にしない
掲載内容を整えても、面接が会社側から質問するだけの場になっていると、応募者が知りたいことは伝わりません。
面接の後半に、こちらから説明する時間を確保しておきます。業務の実態や、入社直後に担当してもらう内容を具体的に話します。ここで応募者が辞退したとしても、入社後に辞められるよりは双方にとって良い結果です。
実際に働く場所を見てもらう時間を取る方法もあります。設備や人数、作業の様子は、言葉で説明するより短時間で伝わります。業種によっては難しい場合もありますが、可能であれば検討する価値があります。
入社後に確認する
書いた内容と実際が合っているかは、入社した人に聞くのが確実です。入社から数か月たった時点で、「募集の内容と違ったところはあったか」を聞いてみます。
出てきた答えは、次の募集で修正する材料になります。この確認を続けていくと、掲載内容は実態に近づいていきます。
まずは現在の募集内容を読み直して、業務の幅と忙しさの波について書かれているかを確認してみてください。この2つが抜けている場合、差が生まれる余地はそこにあります。